木のキッチンにしてよかったなぁ、と思う瞬間~ユーザーの実体験から~
我が家のキッチンは、ちょっと珍しい木のキッチンです。リノベーションする時に、部屋に合わせてオーダーメイドで作ってもらいました。毎日使っていて「このキッチンにしてよかったな」と思う瞬間を語らせていただきたいと思います。(CRAZY WOODスタッフ・有加)
小さな部屋で、木のキッチンを「かわいいなぁ」と眺める時
我が家は築60年の平屋木造住宅で、たった10坪しかない小さなお家です。ワンルームと言ったらいいでしょうか、普段過ごす部屋はLDK一間で、そこでご飯を食べ、ソファでくつろいで、寝る時は布団を敷きます。
だから、どこにいてもキッチンが見えています。スペースに限りがあるので、キッチンは壁付けI型。キッチンの扉もワークトップも、よく見えるレイアウトです。
もしもこのキッチンが、ピカピカのステンレスやビニール素材だったら。それはそれでお手入れなどは楽だけど、せっかくの無垢フローリングを張った部屋の中で、ちょっと浮いてしまっていたかも。
小さな部屋だからこそ、インテリアによく馴染む木のキッチンにしてよかったなと思います。まるで家具のように自然な感じでたたずんでいて、部屋でくつろいでいても気にならないんです。それでいて、扉の色や取っ手は好きなデザインにしたから、見るたびにうれしい気持ちにもなります。
「今日もうちのキッチンはかわいいなぁ」とニヤニヤしながら、毎日過ごしています。
料理をしながら「気持ちいいなぁ」と天板に触れる時
キッチンのワークトップは無垢のパイン材。自然塗料で仕上げているので、木そのもののやさしい手触りが残っていて、まるで大きなまな板みたい(笑)と思ったりします。木のワークトップで料理するとき、手で触れても冷たくないし、すべすべしていて気持ちいいので、つい触ってしまいます。
ただ、木は柔らかいので傷がつきやすいし、熱い鍋をそのまま置いたりすると焦げてしまうから、物を落とさないように気を付けたり、必ず鍋敷きを敷いたりと気を遣うこともあります。使い始めて一年経つけど、今のところ目立つ傷も焦げもありません。ちなみにステンレスの天板でも、本当は熱い鍋をそのまま置くのは変形するからよくないんですって。
普段の扱いにちょっと気を付けていれば、触るたびに「木って気持ちいいなぁ」を日々味わえる。そのせいか、とっても親しみやすいというか、愛着が湧いてくるキッチンだと思います。ちなみに木の天板はステンレスのように光の反射もないので、眩しくないというのもポイントです。他のお家で久しぶりにステンレスキッチンに立ったとき、(何だこれ、眩しいな!)驚いてしまいました。料理中に目に入る光は、意外と負担になっているのかもしれません。
木の丈夫な扉をパタンと閉める時
キッチン本体と扉は、プライウッドという素材に塗装した板でできています。プライウッドとは薄い木の板を積層して張り合わせた木質素材(成形合板)で、無垢材よりコストを抑えられるので今回採用しました。
一般的なメーカーのキッチン本体の素材も木質ですが、MDFという繊維版の表面にメラミン樹脂などを貼り付けた薄手のものが多いです。これは感覚的な話にはなるのですが、プライウッドや無垢板の扉の方が、重厚感があって好きです。見た目にもしっかりした感じがあるし、扉をパタンと閉めるときの音とか感触が、しっかりしているんですよね。
メーカー品のキッチンは軽量化と理由で扉材はできるだけ薄く、軽くしていると思うので、単純にどちらがよいと比べられませんが、木の扉を開け閉めするたびに「あぁ、私はしっかりしたいいキッチンを毎日使っているんだなぁ」と、またニヤニヤしてしまうのです。
キッチンと自分との向き合い方が変わったと思う時
昔住んでいたアパートのキッチン天板は人造大理石だったので、多少雑に扱っても傷は気にならなかったし、濡れても染みたりしないから、拭かずにそのまま放置していました。今思えば、目に見えない汚れもたくさんついていて、実はけっこう不潔だったのではないか・・・?と感じてしまいます。
木の天板はどうしても汚れやすい・カビやすいし、傷もつきやすい。だからこそ、水や汚れがついたらこまめにふき取るようになったし、木のキッチンでの物の扱いは、そっと優しくなりました。 だからかえって清潔に自信があって、まな板から野菜がこぼれ落ちても何となく安心感があるんです。
それに、物の扱いが優しくなり、自分の所作がちょっと優雅になったのではないかと感じています。使う人を優しくする、所作を変える、そんな思わぬ効果が木という素材にはあるような気がしています。
さて、気を付けていても、どうしてもあちこちにシミやカビが付き始めています。そろそろヤスリをかけたり、メンテナンスしてあげないと。気が付かなくてゴメンね、キッチンちゃん。という気持ちです。キッチンとは人間様が酷使する道具ではなく、お互いに思いやる相棒のような存在なのだな、と考え方が変わっていきます。
汚れや日焼けも含めて、色がだんだんと変わっていく木のキッチン。それはゆくゆくは「味わい」になっていくものでもあります。普通は20年くらいで新しいものに取り換える設備だと考えられているキッチンですが、家具のような家族のようなこのキッチンなら、死ぬまでお付き合いしたいなと感じています。
感じ方は人それぞれだけれど。
これが、一年ほど木のキッチンを使ってみた感想です。人によっては、木の扱いなんて面倒くさい、不便だと思うかもしれない。私も最初はうまく扱えるのか不安もありました。確かに日々気を付けなければならないポイントもあるけれど、それ以上に「いいな」と思うことがたくさんあるし、不満というほどの不満は思い浮かばないものです。
私が感じたような、こんな気持ちに共感していただける方には、木のキッチンが合っているかもしれません。便利で手に入りやすい、安心感のあるメーカー品もいいけれど、こだわりのリノベーションには木のキッチンという選択肢も知っておいていただきたいと思います。
もし木のキッチンを愛用しはじめた時には、一緒にそのよさを語り合えるお友達になっていただけたら嬉しいなぁ。そんなもう一つの「木のキッチンにしてよかったなぁ」の瞬間が来るのを楽しみにしています。