フローリングや家の素材を「服」にたとえて選んでみる

家づくりでは、施主はいろいろなことを選んで決めなければなりません。キッチンなどの水廻りの設備はもちろん、床や壁の仕上材料、断熱材、外壁の種類・・・。迷ったとき、服にたとえてみると分かりやすいかもしれません。

内装材は「肌着」とくに床は大事。

お家の中の素材、天井や壁、床などの内装材は、服でいえば肌着や下着(インナー)に近いでしょう。家の外からは見えないけれど、中で暮らす人が日々見て触れている部分だからです。とくには、靴を脱いで過ごす日本の暮らしでは、触れている時間がもっとも長い部分。夏場など素足で歩けば、直接皮膚に触れるものです。

また、他の部分を服にたとえてみるなら、壁の中に詰める断熱材は、ジャケットなど防寒着の綿に近いですね。空気をたくさん含むことで、ジャケットの中の熱が外に逃げることを防ぎ、あたたかさを保ちます。最近は断熱性能の高いダウン(羽毛)が人気で、そのグレードや厚みによってあたたかさが違いますよね。

そして家の外見を決める外壁は、外から見える洋服やアウターです。見た目だけでなく、風雨や日差し、汚れから着る人を守る重要な役目も担っています。屋根は帽子にたとえてみれば、つばが広い形の方が日差しを避けることができますので、夏の暑さ厳しい日本の風土では、庇が出ているお家が多いのです。

普段、服を選ぶときの価値観を思い出してみる

一生に一度、ほとんどの人が初めての家づくりでは判断を迷ってしまいがちですが、毎日着る洋服は自分の価値観にしたがって自然に選んでいるはずです。「値段がリーズナブル」それも大事。「快適であること」「長持ちすること」「人目を惹くおしゃれなデザイン」などなど。

たとえば肌着や下着は、どのように選んでいますか?毎日着るものだから、肌触りや通気性などの心地よさが大事で、見た目や汚れにくさは二の次ではないでしょうか。絶対汚れるのがいや!といって、呼吸しないビニールの下着を着ている人はいないのではないでしょうか。最近では、より安全性を大切にしたオーガニックコットンを選ぶ人も増えていますね。時には「勝負下着」という考えもありますから、気合を入れた部屋が一部屋あってもいいかもしれません。

人に見られるメインの洋服やアウターはどうでしょうか。汚れにくい素材であることも大事ですし、親しみやすい印象にしたければコットンなどの天然繊維を選ぶかもしれません。革のジャケットはリーズナブルな合成皮革もあれば、着こむほどに味が出てくる天然皮革もありますよね。カラーや柄は、その人の個性を発揮できるポイントですが、場によっては周囲に合わせて浮きすぎないようにするシーンもあります。

あなたは普段、どんな価値観で服を選んでいますか?

服選びと家の素材選びで大きく違う点

栗フローリング

しかし、普段の服選びと家の素材選びでは、大きく違う点があります。それは、買い替えがきく服と違って、家の素材は簡単に取り換えることができないこと。家の素材は、流行遅れになったり傷んだからといってすぐ買い替えられるものではありません。安くないものですし、一度建てたら何十年も一緒に過ごしていくものです。

だからこそ、コストや流行のデザイン、便利な機能ばかりを基準に選ぶのではなく、長持ちするもの、快適なもの、時間を経て味わいが増すもの、そして愛着が湧くものを選びたいですよね。長く一緒に過ごすなら、見た目のきれいさよりも心地よさが大切かもしれません。

また、これは洋服にも共通することですが、長く使う中で、自分で(またはプロに頼んで)繕ったり修理できることも大切です。その時には、何十年後も同じデザインの材料が手に入ることが必要です。その点、プリントシートのフローリングやサイディングといった外壁は廃番になるおそれがありますが、無垢材や金属などロングセラーの素材なら、将来も同じものが手に入るでしょう。

服選びの価値観を参考に、とはいったものの、やっぱり家づくりの時には慎重になってしまいそうですね(笑)しかし自分の考え方を見直す際に、大きなヒントになると思います。プロのアドバイスも参考にしながら、素材選びを楽しんでくださいね。